姿
儀式場の控え室に入ってきた竜人の姿を見て少し驚いた。
これから竜体封印を行う。
それによって人の姿に“固定”されてしまう。
それなのにこの竜人は少年の姿をしていた。
「その姿でいいのかい?」
ただの世話係として控えていただけなのに、儀式場に入る扉の前に立つその竜人に思わず聞いてしまった。
「もっと年寄りの方がいいと思うか?」
逆に聞き返されてしまった。
「ここで魔法使いとしてやっていくなら、他の奴に侮られない姿の方がいいと思うんだが」
そんなことを呟くと、竜人が振り返ってこちらの目を見て言った。
「人は見た目で判断することが多い。新しいところに入り込むなら取っつきやすい方がいいだろ」
軽い口調と裏腹に、竜人の目は赤く輝き真剣な光を宿していた。
この光を見たら
竜だと
人と違う生き物だと
わかってしまう。
「わざわざ見た目で警戒させるのもどうかと思うし」
竜人は目を細め笑う。
「それに、あんたみたいに話しかけてもらえると嬉しいしな」
光は少し見えなくなった。
そして少年は扉を開き儀式場へ入っていった。
少年の姿をしていなかったら話しかけただろうか?
|